[12]がん対策部
この20年間、事業の根幹を揺るがす老人保健法施行(昭和58年)、検診財政の一般財源化(平成10年)、マンモグラフィ導入(平成12年)、行政施策の推移傾向(老人保健法→健康日本21など)やマスコミ等による検診の有効性への問題提起等々に翻弄されながらも、本会の婦人科がん対策事業に遅滞が見当たらないのは、主柱(施設検診)を見失うことなく支えた各支部ならびに会員各位の理解と不断の努力の賜物といえよう。
今日の婦人科がん対策は、医学的・制度的に早期発見、早期治療、死亡率減少の連鎖を目指すだけではなく、予防、検診、治療、予後の各段階で、QOLに資する対応を社会が求めている時代を迎えたと言えよう。
究極の目標(がんの克服)が遮眼帯とならないよう、各段階でそれなりの満足感をもたらす医学的・制度的な対応もテーマに加えて、本年度は以下の事業を行う。
1.全国支部がん対策担当者連絡会の開催
平成14年度に引き続き、婦人科がん検診を取り巻く諸問題への連絡・協議のため、第22回目の担当者連絡会を開催する。
とかく無機質となりがちな検診事業において、QOLの視点や、昨年度の充電期間で得られた成果(乳がんに関する見解、他)、行政や諸団体の担当者からの生の声も盛り込んで、婦人科がん検診事業の活性化に資する。
2.婦人科がん検診の検討
婦人科がん検診(子宮がん・乳がん・卵巣がん)は、いくつかのフィルター(1.医学面、2.技術面、3.制度面、4.社会的なニーズ、5.費用対効果、等々)を通して成り立っている。
これらは検診対象部位毎に問題点や課題が異なるため、昨年度に引き続き小委員会による検討やFAX会議等も活用して、検討の効率化を図る。
- (1) 子宮がん検診
- 1)頸がん・体がん検診の啓発(検診の有効性、初回・継続的な受診勧誘策等)。
2)検診事業の拡大(対象年齢引き下げ、若年者や妊婦への検診推進等)。
3)精度管理の向上策(企業・職域検診、細胞診報告形式、精度管理)。
- (2) 乳がん検診
- 1)マンモグラフィ検診精度管理中央委員会との連携・協調
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マンモグラフィ検診精度管理中央委員会との連携(相互間の情報収受)を密にして、検診医・検診機関の充実と精度管理の向上を図る。
- 2)「マンモグラム読影に関する研修会」の開催・支援
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検診医の充実と精度管理の向上を目的に「マンモグラム読影に関する研修会」をマンモグラフィ検診精度管理中央委員会と共催して開催する。
また、同会共催のもと支部でも主催できるように支援する。
- 3)MMG併用検診の普及 MMG併用検診の未実施地域への普及はもとより、会員のニーズに即したMMG導入による併用検診の普及にも努める。
- 4)検診方法に関する検討
- 視触診のみの検診、併用検診(MMGや超音波)やMMG読影システム、検診器具等も含めた動向を把握し、精度管理と会員施設活用の観点から問題点を抽出し検討する。
- (3) 卵巣がん検診 卵巣がん検診を婦人科がんの検診事業に導入可否に関する事前検討を継続する。
3.健常者への啓発対策(女性の習慣病対策を含めて婦人科がん予防等の一次予防)
日常生活の中で、がん検診がもたらすQOL(安心感や早期発見他)にも着目し、健常者にとってメリットある情報を提供するため、喫煙や性行動等の生活習慣から婦人科がんを誘発する因子をいくつかピックアップし、社会的な啓発策模索を継続する。
4.調査事業
婦人科がん検診の動向や現状把握のため、以下の調査を通じて検討資料の入手に努める。
- (1) 「婦人科がん検診料金に関する調査」
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婦人科がん検診料金を各支部担当者の協力を得て実施し、地域的な傾向や状況を調査結果にまとめて各支部に配付する。
- (2) 基礎的なデータの収集
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婦人科がん検診対策の検討資料とするため、子宮がん、乳がん、卵巣がん検診等に関する基礎的なデータやエビデンスの収集に努める。
このため、前述調査の活用や新たな調査を企画し、求めるデータに沿った対応を図る。
5.関連諸団体への対応
- (1) 連携・参加促進
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会員への有用情報や、社会への啓発情報収集のため、日本婦人科がん検診学会、日本婦人科乳癌研究会、日本乳癌検診学会等との密接な連絡・提携に努める他、同諸団体への参加促進(職責委員・役員の派遣や会員の入会)に努める。
- (2) 関連諸団体事業への協力
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行政施策(健康日本21他)や日本医師会の事業(かかりつけ医等)をはじめ、本会の方針に沿う諸団体の事業には積極的に協力し、がん対策事業推進の円滑化に資する。
6.委員会 以上の事業を円滑に遂行するため、がん対策委員会を存置する。
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